脳死肝移植のドナー選定
脳死肝移植は、臓器提供者(ドナー)とそのご家族の尊いご意思によるものです。臓器提供を前提として脳死と判定された場合、「臓器の移植に関する法律」に基づき、人の死となります。臓器提供希望方と、臓器移植希望者の橋渡し、すなわち斡旋を行っている国内唯一の団体が、日本臓器移植ネットワーク(JOT)です。JOTホームページには脳死移植に関する法令やデータなど様々な情報が公開されています。その中に、脳死とされうる状態と判断されてから、臓器摘出手術に至るまでの手順も記載されているので、詳細についてはJOTホームページを参照ください。
ドナー評価の流れ
脳死とされうる状態と判断された方(家族)が臓器提供を希望された場合、提供施設からJOTへの連絡を行い、臓器移植コーディネーター(Co)が派遣されます。脳死移植におけるドナー評価は臓器移植Coによる一次評価から臓器摘出術中の最終評価まであります。
- 一次評価:臓器移植Coがドナー適応基準に照らして、絶対的除外条件※の有無を検討します。
- 二次評価:第一回目の法的脳死判定の後、レシピエントが決定※※する前に、摘出臓器が移植に適しているか否かについて各臓器専門のメディカル・コンサルタントに依頼して行われます。
- 三次評価:レシピエント決定後に、臓器摘出医または移植医が行う。法的脳死判定2回目の後、脳死と判定されれば、移植実施施設において、ドナー情報と現在のレシピエント候補者の病状を速やかに把握するとともに、レシピエントの意思確認を行い、移植実施可能かを判断します。
- 最終評価:臓器摘出の際に摘出医が視診・触診によって評価し、必要に応じて迅速病理検査も実施します。
- ※:脳死ドナー絶対禁忌条件として以下の4つが挙げられます。(1)全身性の活動性感染症(2)HIV抗体、HTLV-1抗体、HBs抗原などが陽性(3)クロイツフェルト・ヤコブ病及びその疑い(4)悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く)。以下については慎重に適応を決定します。(1)病理組織学的な肝臓の異常(2)生化学的肝機能検査の異常(3)1週間以内の腹部、消化管手術及び細菌感染を伴う腹部外傷(4)胆道系手術の既往(5)重症糖尿病(6)過度の肥満(7)重症の熱傷(8)長期の低酸素状態(9)高度の高血圧又は長期の低血圧(10)HCV抗体陽性
- ※※:レシピエント選択基準の詳細は、JOTホームページ(移植希望者(レシピエント)選択基準の一部改正)内の、肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準(PDF)を参照ください。
脳死分割肝移植について
脳死肝移植のドナープールの拡大、小児肝移植における待機死亡率の軽減などを目的に、脳死分割肝移植が行われることがあります。欧米諸外国においては、分割可能と考えるドナー条件および脳死分割肝移植の適否についてのレシピエント条件を明確化し、臓器分配システムを構築している地域もあります。日本においては、ドナー条件として年齢(50歳未満)、AST/ALT値(正常上限3倍以下)、昇圧剤使用(1剤以下)といった項目を目安に判断され、さらに解剖学的異常(門脈分岐、肝動脈分岐)があれば分割可能か検討されます。脳死分割肝移植適格とされるドナーの場合、レシピエント候補者もまた脳死分割肝移植に適するかを判断する必要があります。レシピエント条件としては、グラフトサイズ、レシピエントの年齢や体格、肝予備能、搬送時間等を考慮すべきであり、最終的には個々のレシピエント施設における判断に委ねられます。
詳細な肝採取手術や脳死分割肝移植についての記述は、日本移植学会を参照ください。